スペインの生ハムと言えば、ハモン・セラーノとハモン・イベリコが有名です。
ハモン・セラーノとは白豚を原料とした生ハムで、ハモン・イベリコとはイベリコ豚を原料とした生ハムのことです。どちらも紀元前から生ハム作りが行われていたと考えられていますが、もともとはすべてハモン・セラーノと呼ばれていました。少し複雑なのですが、ハモン・イベリコもひっくるめてハモン・セラーノと呼ばれていたのです。
ハモン・セラーノという単語を詳しく解説すると、ハモンとは豚の後ろ足を使った生ハムのことで、セラーノとは「山岳の」という意味です。もともとハモン・イベリコも山の高地で生産されていた為、原料の面からは区別せず、イベリコ豚の生ハムも山岳地域で作られていたため同義語として使用されてきたのです。
パタ・ネグラという名称
1980年代のスペインではこのようにきちんとした定義づけはなされていませんでした。とはいっても白豚の生ハムもイベリコ豚の生ハムも、両方をハモン・セラーノと呼ぶには抵抗がある人たちもいました。なぜならばイベリコ豚の生ハムは製法が特殊で手間もコストもかかるため、生産者たちは明確に区別をしたがったのです。
そうして生まれた言葉がパタ・ネグラという呼び方です。
パタ・ネグラとは「黒足」という意味で、イベリコ豚の蹄が黒いことに由来しています。白豚の生ハムとイベリコ豚の生ハムを区別するために、この俗称が使われていきました。
しかしながら、イベリコ豚の中には蹄の黒くない豚も存在します。 また、現在では主流となった混血のイベリコ豚を生み出すために掛け合わせるデュロック種の豚には黒い蹄のものが多くいます。
このようにパタ・ネグラがハモン・イベリコを指すということが不正確であった為、現在ではこの呼び方は認められていません。
ちなみにイベリコ豚とデュロック豚を見分けるには、蹄ではなく体毛を見るとわかるらしいです。デュロック種の体毛は赤褐色なのに対して、イベリコ豚の体毛は黒いのが特徴です。
まとめ
1980年代頃までは、ハモン・イベリコもハモン・セラーノと呼ばれていました。その後、パタ・ネグラという俗称が出回ったものの、消費者の混乱を招く結果となりました。現在では法律でハモン・イベリコという名称とその基準が定められています。
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