私はもともと生ハムが大好きで、イタリア産、スペイン産、フランス産…様々な生ハムを食べてきました。特に初めてイベリコ豚の生ハムを食べた時の驚きは今でも忘れることができません。当時はイベリコ豚にもドングリを食べている豚と食べていない豚があって、ランク分けされていることも知りませんでしたし、熟成期間を気にしたこともありませんでした。
ある日、まだスペインバルが今ほどたくさんはなかった頃、美味しいイベリコ豚の生ハムが食べられるバルがあると聞いて友人とそのバルに向かいました。
バルに入るとカウンターには原木(足丸ごと1本)が置いてあり、スライスパックの生ハムしか食べたことがなかった私はなんだか異国にいる気分になりました。もちろん、すぐさまハモン・イベリコを注文!お兄さんが目の前でカッティングしてくれたことも印象的でした。
そして待ちに待った切りたてのハモン・イベリコがやってきました。
しかし…
良く見ると生ハムの表面に白い斑点が見られます。
私と友人は「これ、何だろう?」と首をかしげました。そして友人が「この白いの、カビじゃない?」と言い出したのです。というのも生ハムを熟成させる上でカビが重要な役割を果たしているということを聞いたことがあったようなのです。何の知識もなかった私もその白い斑点をカビだと思ってしまったのです。私と友人はきっと害はないと思いながら、目の前にあるハモン・イベリコを食べるのをためらっていました。
するとそんな私たちを見ておかしいと思ったのか、バルのお兄さんがやってきて「どうされましたか?」と尋ねてくれました。私たちは少し気が引けながらも、「生ハムにある白い点って、カビじゃないですよね…?」と聞いてみました。
バルのお兄さんは少し笑って「大丈夫ですよ!それは良質なハモン(生ハム)の証です!」と言いました。
白い斑点の正体
実はこの白い斑点、カビなんかではなく旨味成分であるアミノ酸だったのです。スペイン語で「Pintas Blancas(ピンタス・ブランカス)」と言い、塩の結晶のようなものが生ハムの筋肉部分に現れる現象です。
生ハムの熟成が進むにつれてチロシンと呼ばれるアミノ酸が増えて固まったもので、もともと長期熟成のチーズから発見されました。神経や脳の働きをサポートするために必要なアミノ酸で、うつ病の改善、認知症の予防に効果的だといわれています。
チロンシンはバナナやアボカドなどの果物に多く含まれています。チロシンは糖分と一緒に摂取すると吸収が良くなる性質があり、果物から摂取することで効率良く摂取することができます。生ハムとフルーツをあわせた料理がよく見られますが、とても良い摂取方法であるということがわかります。
注意点としてはアミノ酸の結晶であるがゆえに、食感はざらつきが感じられます。小さい物はさほど気になりませんが、大きなものになると噛んだ時に「じゃり」っと感じることがあります。その食感が苦手な方は取り除いて食べることをおすすめします。
まとめ
長期熟成の生ハムに現れる白い斑点。1年程度の熟成期間ではなかなか現れないとされており、この白い結晶こそが良質な生ハムの証であることは間違いありません。実際生ハムの聖地であるギフエロの生ハム製造者の間でも、この白い斑点があることこそ出来の良いイベリコハムの特徴であるとされています。
白い斑点があっても決してカビではないのでご安心ください!
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