以前の記事で「美味しい生ハムを食べたければ、豚の種類やランクに注目すべき!」と力説しました。
【参照:美味しい生ハムの選び方(通販編)】
なかでもイベリコ豚はその特殊な生態ゆえに、他の豚とは一線を画していることも説明しました。日本でもイベリコ豚は今やレストランでも人気のメニューです。
なぜこれほどまでにイベリコ豚は人気が出たのか。
そこで今回は謎の多いイベリコ豚について詳しく見ていこうと思います。
起源
豚の原種は、イノシシに由来していると考えられています。そして人間に飼育される過程で様々な身体的特徴の変化が起きました。
例えば野生のイノシシは頭から肩(前足)までの体重が、全重量の70%を占めるのに対して、現在の豚は反対にベーコンなどを取る背中や腹、お尻や後足が大きく、全重量の70%を占めています。
また、イノシシは年に1回しか出産せず、数も5頭程度です。しかし豚は年に2回出産を行い、10頭ほど生まれますのでイノシシの約4~5倍です。
イベリコ豚も同様にイノシシが祖先にあたるとされており、諸説ありますがその起源は紀元前3000年頃にさかのぼります。当時イベリア半島に住んでいたケルト・イベリア人によってイベリコ豚の祖先を放牧したことが始まりであると言われています。
1950年代に生産性の高い白豚が入ってくるまで、イベリア半島ではハモンと言えばイベリコ豚の生ハムを指していました。
生態系
イベリコ豚が育つ環境は、海抜700m以上で年間降水量が500mm以下という場所です。地中海性気候のため、乾燥が激しいことも特徴です。
このような土地は夏の時期になると食べ物がとても少なくなります。そのような状況に適応するため、彼らは成長スピードを遅くすることで耐え忍ぶようになりました。
イノシシは出産数が少ないと述べましたが、実はイベリコ豚もイノシシと同様に出産で生む子豚数が少ないのです。成長スピードを遅くし、出産数を制限することで食べ物が少ない環境に順応してきたためです。
本来、豚というのは庭先で飼育が可能で、早く成長することと優れた繁殖力を持っているために重宝されてきました。
しかしイベリコ豚は全く逆なのです。
これこそが他の豚とは一線を画し、世界でも類を見ない特殊な生態を持っているということなのです。
特徴
みなさんは「豚」というとどんな姿をイメージしますか?
一般的には鼻が大きくて丸くて、そして潰れているというのを思い浮かべるのではないでしょうか。
まさに紅の豚に出てくるマルコのようなイメージですね。この豚こそが今日家畜として改良された豚の姿なのです。
一方、野生のイノシシの鼻はどうでしょう?そうです、細長いんですね。
豚舎で育てられる豚は、人間から餌をもらい育ちます。その過程においてこのように変化させていったと考えられています。
イベリコ豚は果たしてどうでしょうか。写真を御覧ください。
このようにイベリコ豚もイノシシに近い形をしています。過酷な環境で生きるには、自らの鼻で地面を掘り起こして餌を食べる必要があるからなのです。
また、足にも注目してください。つま先にかけてぐっと細くなっていることにお気づきでしょうか。
通常の豚と比べてイベリコ豚の四肢は細く、長いのが特徴です。その理由は彼らの運動量に因ります。放牧されたイベリコ豚はストレスを与えられることなく、走り回ります。スペインの広大な土地を、餌を求めて動き回ることでその肉が美味しくなるのです。
今回はこのあたりで。次回に続きます。
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