レストランやバルに行くと、カウンターの上に生ハムが足一本置いてあるのを見たことはないでしょうか。目の前でカッティングしたものはスーパーや百貨店で売っているスライスパックのものとは違い、食感も味も格段に良いです。
この骨付きの生ハムの塊を原木(げんぼく)と呼びます。原木とは伐採した状態の木材を意味する単語ですが、生ハムの足が樹木に似ていることから原木と呼ばれるようになりました。スーパーなどで売られているスライスパックは原木から骨を抜いて形を整え、スライサーでカットしたものを真空パックしています。
スペインでは市場やスーパーに行くと大量の生ハムが原木の状態で吊られています。
原木がまるでカーテンのように吊るされている光景は、日本ではなかなかお目にかかれません。それほど原木というのは存在感があります。
原木1本からどのくらいの生ハムが食べられるか
原木の総重量は小さいもので7kg、大きいものだと10kg以上と個体差があります。この重量はスペインの骨付き生ハム、ハモンの場合です。ハモンとは豚の後足で作った生ハムのことで、前足で作った生ハムはパレタと呼ばれます。パレタ原木の場合、重量は約半分程度4〜5kgと小ぶりになります。また、イタリア産の生ハム原木はその多くが骨無しの為、重量は少なくなります。
骨付きの原木の場合、実際に食べられる部分(可食部)はカッティングの良し悪しにもよりますが、だいたい50〜55%が目安です。約半分が赤身を覆っている余分な脂や、骨などそのままでは食べることができない部分です。原木の重量が9kgであるとすれば、可食部は約半分つまり4.5kgあると計算できます。
原木が置いてあるバルやレストランでは、一人分を20g〜30gとしているお店が多いように思います。間をとって一人分を25gにした場合、原木1本から取れる生ハムの量は次のようになります。
- 原木の総重量:9kg
- 原木の可食部:約半分=4.5kg
- 一人分の生ハムの量:25g
可食部4.5kg(4,500g)÷1皿25g=180皿分
原木1本で180人分の生ハムが食べられる計算になります。これは飲食店が生ハムをいくらで提供するかを決める際の原価計算にもなりますので、必ず覚えていたほうが良いです。上の計算式を参考に、1皿の分量や料金を決めてみてください。
原木を1本買えば毎日生ハムを食べても半年は無くなりませんので、そう考えるととてもお得です。魅力たっぷりな原木ですが、メリットもあればデメリットもあります。
原木のメリットと気を付けるべきポイント
誰もが一度自宅においてみたいと思う、憧れの原木。そんな原木にはメリットがたくさんあります。
メリット
コストパフォーマンスが良い
原木は可食部が半分になってしまうものの、スライスパックなどに比べると割安です。原木はどうしても最初の金額が大きいので高いと感じてしまいますが、一度購入してしまえばすぐは無くならないのでコストパフォーマンスに優れています。
切りたての食感、風味を味わえる
原木から切り立ての生ハムの食感は、スライスパックのものとは全く別物です。スライスパックは真空されていて圧がかかっていたり、すでに空気に触れているなどの理由から食感と風味が本来の状態ではありません。原木から1枚1枚丁寧に切り出された生ハムは艶艶しく、香りや風味も格段に良いのです。
存在自体がパフォーマンスになる
バルに原木が置いてあるとついつい目が行ってしまいませんか?それほど原木は存在感があり、人を惹き付ける魅力を持っています。
例えばゲストを呼んでのパーティー。その場に原木があればきっとゲストも喜ばれるでしょう。実際に原木を自分でカットできる機会はめったにないでしょうし、皆さんでわいわいと楽しくカットできます。
また、最近では結婚式でケーキ入刀ならぬ「生ハム原木入刀」をされる方が増えてきているらしいです。
気をつけるべき点
保存方法
スライスされた生ハムの場合、必ず冷蔵庫で保存しなければいけません。しかし原木の生ハムは基本的に常温で保存することが出来ます。もともと生ハムは保存食として重宝されてきた歴史を持ち、塩漬けをした後に乾燥熟成を行っているので菌の増殖を抑えているのです。
理想の温度は20〜25℃で、あまり温度変化が激しくない場所に置いてあげるのがベストです。詳しい保存方法はこちらの記事を参考にしてください。
カッティング
原木を取り扱うにあたり、カッティング方法を学ぶことは避けては通れません。スペインにはコルタドールと呼ばれる生ハムをカットする職人が存在し、職業にもなっているほど専門性の高い分野です。カッティングの良し悪しで生ハムの食感が大きく変わってきますし、先述の可食部の割合にも影響してきます。
ただし、そこまで難しく考えず、どこから切り始めたら良いか、骨の周りの切り方、裏面の切り方などポイントをいくつか抑えておけば大丈夫です。原木のカッティングについてはこちらの記事を参考にしてください。
THE STORYでは原木の出張カッティングサービスも承っております。ご興味がある方はお問い合わせページよりメッセージをお送りください。
余分な脂肪や骨を活用する
どれほどカッティングが上手くとも、原木のすべてを食べることは出来ません。約半分は余分な脂肪や骨に当たるからです。
しかし、捨てるにはもったいない。原木のメリットを最大限活用できる方法をお教えいたします。
- 余分な脂…原木を保管する際、切り口の乾燥を防ぐために余った脂で覆うようにします。また、脂を炒め物に使ったり、ラルドとしてパンに挟んだりといつもの料理に深みを与えてくれます。
- 骨…まさに豚骨で、より熟成感のある味わい深いスープを取ることが出来ます。
特に骨からスープを取るというのは原木でしかできませんので、是非活用してみてください。
生ハム原木ができるまで
生ハムの原木は産地や原料により製法が若干異なりますが、大まかには次のような工程を経て完成します。
豚の飼育
↓
屠殺
↓
血抜き、洗浄
↓
塩漬け
↓
成形
↓
乾燥
↓
熟成
原木が出来上がるまでには、2年〜5年、長いものになると7年以上の歳月が必要になります。しかも工業製品のように機械的に大量に作れるわけではありません。生産者が手間ひまをかけて作った生ハムをどうか大切に扱ってあげてください。
どこで買える?
スーパーなどではスライスパックしか売っておらず、原木が欲しい時は通販で買う人がほとんどのようです。
THE STORY公式オンラインショップでも販売しておりますので御覧ください。
生ハム原木を探している飲食店様等はこちらからお問い合わせください。
担当者よりご連絡を差し上げます。
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